■チュルリョーニス展、内なる星図
■作家:ミカロユス・コンスタンティナス・チュルリョーニス,所蔵:国立M.K.チュルリョーニス美術館
■国立西洋美術館,2026.3.28-6.14
■会場で上映されていたチュルリョーニスの紹介映像を眺めながら、リトアニアと聞いて真っ先に思い浮かぶのが映画作家ジョナス・メカスしかいないことに気づく。 1970年代の作品はいまも記憶に残っているが、それほどにリトアニアは遠い国として私の中にあった。
チュルリョーニスという名は今回が初めてで、しかも彼は画家であると同時に音楽家でもあったという。 作品のタイトルに音楽用語が付されているのもそのためだろう。 そういえば会場にも彼の音楽が流れていた。 今こうして美術館のウェブに掲載されていた彼の作曲集を聴きながら、この文章を書いている。
特に心に残ったのは「星のソナタ」(1908年)と「おとぎ話」(1907年)の数枚である。 そして「祭壇」(1909年)の前では、ふと画家・有元利夫の名が頭をよぎった。 チュルリョーニスと同じく、絵画の背後に音楽的な気配を感じさせる作家である。
絵画と音楽の関係は興味深い。 個々の作品というより、画家が持つ固有の画風から音楽の形や質が立ち上がってくるからだ。 作家ごとに<画風=音風景>が成立する。 この式こそが、本展のタイトルにある「内なる星図」を指しているのかもしれない。
さらに、ロシア帝国支配下のリトアニアに根差した個性が、絵画にも音楽にも確かに感じられる。 展示の最後に置かれていた「レックス(王)」(1909年)は、その歴史的背景が最も強く押し出された作品だった。 彼の得意とする鳥瞰的で豊かな風景とは異なり、王の暗い姿が重く沈む。 政治状況が彼の精神を追い詰めた一因であったとしても不思議ではない。
ともあれ、今日は遠いと思っていたリトアニアに一歩近づけたようで、彼の画風が持つような静かな喜びが残った。