■森英恵、ヴァイタル・タイプ

■作家:森英恵,奈良原一高,田中一光,横尾忠則,佐藤しのぶ,小津安二郎ほか
■国立新美術館,2026.4.15-7.6
■世界を相手に活躍してきた森英恵という存在の「謎」が一つ解けた気がした。 若い頃に手がけた映画衣装の仕事を通じ、監督や俳優との関わりの中で、社会の仕組みや人間関係の表裏を徹底的に叩き込まれたのだろう。 そこで培われた経験が、もともとのヴァイタル・タイプの気質に磨きをかけ、〈マダム・バタフライ〉の悲劇性から抜け出した<モンシロチョウ>として、世界へ羽ばたく原動力になったのだと感じた。
さらに、彼女が世界を相手にできた理由の二つ目も見えてくる。 ファッションメディアへの積極的な進出である。 そこには芸術家とのコラボレーションも含まれる。 田中一光や横尾忠則の作品はこれまで数多く見てきたが、森英恵の名と結びつけて考えたことはなかった。 遡れば、小津安二郎から受けた影響もその系譜にある。 そういえば、岡田茉莉子の衣装に感じていた「小津的だが何かが違う」という印象が、いま森英恵へとつながっていく驚きがある。
つい先ほど観てきた「アントニー・ガウディ」では、「すべての芸術は建築に通じる」と語られていた。 しかし森英恵のファッションは、必ずしもその枠に収まらない。 おそらく〈衣・食・住〉という人間生活の三要素が、互いに対等であるからだろう。 今日はさらに「スープはいのち」も観たので、〈衣・食・住〉の三つの美術展が偶然にも揃ったことになる。 思いがけない重なりによって、楽しさが三倍に膨らんだ一日だった。