■風景論以後 ■何が見える?

■東京都写真美術館,2023.7.19-11.5
■風景論とは何か? 会場には写真と映像が展示されている。 それらをみても風景論はよくわからない、作者の意図を少しは窺えるが・・。 論がつくとやはり言葉で表現したくなる。 映像作品は10本くらいですか? いつものとおり長編作品は選択しました。 今回は「略称、連続射殺魔」(1969年作、足立正生ほか監督、86分)を観ることにする。
これは1968年に4都市で発生した「 永山則夫連続射殺事件」を扱った作品で、永山の軌跡を辿る内容です。 彼は、・・生まれた網走から青森へ、そして上京して渋谷フルーツパーラ店に就職。 密航するが失敗。 宇都宮の自動車整備工場へ、守口で米屋へ、羽田空港レストランへ。 盗みで補導。 川崎でクリーニング店へ、新宿で牛乳配達。 再密航が失敗。 杉並で牛乳配達、青森に帰り、長野で自衛隊入隊失敗。 十数回の転職後、横須賀で銃を盗む。 その後も、新宿で喫茶店のボーイを、・・。
永山の就職先の職場や住込み寮も正確に撮影している。 彼が見たであろう故郷や都市の風景をそのままの状態で観客はみることができます。 そして彼が働いていた姿を想像できる。 彼の心情まではわからないが、彼のみた風景がどのようなものだったのか、生々しく伝わってくる。
今みると1960年代の風景は安物に囲まれた重苦しい、しかし妙に活気があります。 貧乏だが貧乏人とは思っていない活気だ。 それは皆が夢を持っていたから。 しかし永山はどうだったのだろう? なぜ何度も密航を企てたのだろう? あの風景が硬直した冷たいモノにみえていたのだろうか? ・・。
大島渚「東京戦争戦後秘話予告編」(1970年、6分)が流れていた。 レネやゴダールを意識した予告にみえる。 因みに私の大島渚ベスト3は「太陽の墓場」「日本の夜と霧」「絞首刑」。 でも、いま観直したらベスト3は違ってしまうかも。 映画も一期一会だからです。