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■コレスポンデンス ■岡崎乾二郎、而今而後 ■シャハナ・ラジャニ

*下記の□3展を観る. ■東京都現代美術館,2025.4.26-6.29 □コレスポンデンス,サウンドウォーク・コレクティヴ&パティ・スミス ■作家:パティ・スミス,サウンドウォーク・コレクティヴ(ステファン・クラスニアンスキー,シモーヌ・メルリ他) ■先月のサウンドウォーク・コレクティヴ東京公演は残念ながら観ていない。 当美術館では主に映像作品に絞っているようです。 40mx10m四方を映像で満たした会場で8作品を上映していました。 2時間ほどかけて全てを観る。 映像の中でパティ・スミスが詩を朗読しています。 映画関連らしい4作品「パゾリーニ」「メディア」「侍者と芸術家と自然」「アナーキーの王子」ではP・P・パゾリーニ、A・タルコフスキー、J=L・ゴダールの名前がみえる。 活動範囲が広い彼女は映画への接近も容易だったのでしょう。 しかし1960年代の映画を今になって何故取り込んだのか? 疑問が残ります。 他4作品「チェルノブイリの子どもたち」「さまよえる者の叫び」「燃えさかる1946-2024」「大絶滅1946-2024」は自然環境に関する内容です。 彼女が自然保護活動に力を入れていたのを初めて知る。 後者2作品は1946年から発生した火災記録や絶滅生物の名前を読み上げていく単純な作品だが、これを聞いていると人類が頼りなく思えてくる。 また詩のなかに「神」の語句が多いのも特徴です。 自然への接し方がキリスト教的にみえます。 映像はどれも大画面で迫力十分でした。 でも映画関連と自然環境の組合せは突飛でしたね。 彼女のアナーキーなところが見え隠れしていました。 *美術館、 https://www.mot-art-museum.jp/exhibitions/MOTPlus-correspondences/ □岡崎乾二郎,而今而後 ■作家:岡崎乾二郎 ■ダンボール紙?の立体模型で始まり、幅のある筆?で短く描いたカラフルな抽象画、彫刻の3種が会場の9割を占めている。 とくに抽象画のキャプションには具体的風景などが小説の断片のように書いてある。 絵と文章に断絶がある。 絵と文は観客からみると次元を合わせられない。 多くの作品は自信に溢れているようにみえます。 「世界は崩壊しているのではない。 動揺しているのは私たちの認識である」。 揺るぎない世界を確信...

■LOVEファッション、私を着がえるとき ■愛について ■楊博 Yang・Bo

*以下の□3展を観る. ■東京オペラシティアートギャラリー,2025.4.16-6.22 □LOVEファッション,私を着がえるとき ■作家:ステラ・マッカートニー,山本耀司,ジル・サンダー,ラフ・シモンズ,ジョン・ガリアーノ,アレキサンダー・マックイーン他 ■京都服飾文化研究財団所蔵から130点を展示している。 切り口が感覚的でファッションの海に投げ出されたような会場です。 年代順? でもない。 端から順に眺め歩く。 動植物との関係を論じる「自然に帰りたい」から始まる。 「きれいになりたい」ではC・ディオールなどのオートクチュールを集め、「ありのままでいたい」はH・ラングの下着ファッション、「自然になりたい」ではオペラ「オーランドー」を紹介、「我を忘れたい」の高揚感溢れる作品で閉じる。 川久保玲がまとまっていましね。 コム・デ・ギャルソンで1997年、2020年を飾っていた。 後者は上記オペラの舞台衣装としてです。 KCIはどういう組織か知らない。 服飾文化と「LOVE」を巧くまとめた展示になっていました。 *京都服飾文化研究財団(KCI)所蔵作品 *美術館、 https://www.operacity.jp/ag/exh285/ □愛について,収蔵品展083寺田コレクションより ■作家:加藤清美,オノデラユキ,内田あぐり,時松はるな,四谷シモン,金昭希,加藤ゆわ他 ■1階の「LOVE」の続きのようだが繋がりは見え難い。 有元利夫と有元容子、そろって展示されていたのは初めてでしょうか? 2階のコレクション展はいつも楽しめる。 でも、毎回気に入る作品が違ってくる。 心身の調子によるからです。 今回は開光市の作品が光っていました。 それに智内兄助、落田洋子かな。 *美術館、 https://www.operacity.jp/ag/exh/detail.php?id=311 □楊博,YanBo ■作家:楊博 ■雑な描き方だが味があります。 肖像画はデヴィット・ボーイだと直ぐ分かった。 ざっと見て回る。 *美術館、 https://www.operacity.jp/ag/exh/detail.php?id=312

■不易流行 ■鷹野隆大、カスババ ■戦争、ロバート・キャパ

*以下の□3展を観る. ■東京都写真美術館,2025.2.27-6.22 □不易流行 ■作家:石内都,塩崎由美子,大塚千野,片山真理,長野重一,植田正治,山上新平ほか ■松尾芭蕉の言葉の謂れが先ずは目に入る。 作品一覧を一瞥すると予想もつかない章立になっている。 初章の「写された女性たち、初期写真を中心に」から「寄り添う」「移動の時代」「写真からきこえる音」「うつろい、昭和から平成へ」と続く。 そしてインターセクションの章が途中に3回登場する。 1章は「不易」の位置づけか? 次の2章「寄り添う」は作品数の多い塩崎由美子、大塚千野が記憶に残る。 そして3章「移動の時代」は移民や復員が目に付く。 A・スティーグリッツの「三等船室」は風景が強いが、L・ハインの「エリス島」、河野徹「逃れるユダヤ人」、林忠彦「引き上げ(上野駅)」は当時の人々の不安と期待が直接響いてくる。 1960年前後の長野重一「香港」は特殊な歴史背景が重くのしかかる。 4章「写真からきこえる音」。 室内に吊るしてあるカレンダーにはいつも凝視してしまう。 何年何月? 当時、私は何をしていたのか? 写真の中で過去を彷徨い歩く。 5章「うつろい」の田村彰英「湾岸」は東京の昭和残照だ。 インターセクションでは初めの「オノデラユキ」に出鼻をくじかれた。 混乱する。 初めて観る山本綾香の青色の5作品が気に入る。 「赤瀬川原平」は突飛な感じだ。 「不易流行」は扱いやすい言葉である。 いくらでも操作できるが、各章名に収束していく流れも感じられた。 しかし今回のように多くの作家を登場させる展示はスタッフも苦労しているのが分かる。 *美術館、 https://topmuseum.jp/contents/exhibition/index-5069.html □高野隆大,カスババ-この日常を生きのびるために- ■作家:大野隆大 ■「不易流行」と同じで方向性の無い展示だ。 「何も撮るものがない」「最高に退屈」と作者も言っている。 「カスババ」とは滓(カス)のような場所を指すらしい。 日常は滓で溢れている。 でないと気が狂ってしまう。 人生は日常でできているから。  *美術館、 https://topmuseum.jp/contents/exhibition/index-4826.html □戦争,ロバート・キャパ ■作家:...

■西洋絵画、どこから見るか? ■鴨治晃次展、不必要な物で全体が混乱しないように

*以下の□2展を観る. □西洋絵画,どこから見るか?-ルネサンスから印象派まで- ■作家:ジョルジョーネ,フアン・サンチェス・コターン,ベルナルド・ベロッド,ユベール・ロベール,ベルナルディーノ・ルイーニ他 ■国立西洋美術館,2025.3.11-6.8 ■ゴールデンウィークの平日に行ったが混んでいました。 やはり上野は避けるべきでしたね。 「どこから見るか?」のヒントらしき言葉が貼ってある。 でも、軽く無視する。 それより「ルネサンスから印象派まで」、美術600年の流れを辿れたのが嬉しい。 ・・ゴシックが終わりイタリアルネサンスで幕が開き、北方ルネサンスも、そしてバロックへ、18世紀ロココを経て、新古典主義は?、19世紀印象派で幕が下りる・・。 先ずはゴシックのジョットから始まる。 ジョルジョーネと聞くと(いつも)林達夫の嵐の謎を思い出してしまう。 大好きな劇的画家エル・グレコも久しぶり。 スルバランで静物画を外したのは話題のサンチェス・コターンを目立たせる為でしょうか? 紐で吊るされた春キャベツ?が美味しそう。 そしてルーベンスよりヨルダーンスの「ソドムを去るロトとその家族」の輝く作品が気に入る。 静物画ではヘーム「果物籠のある静物」もです。 ユベール・ロベールは2枚。 よく知らないソローリャで締めるのはスペインに敬意を表したからでしょう。 サンディエゴ美術館の特長が出ていました。 西洋美術館が後ろでどっしり構え、サンディエゴ美術館を前面に出した展示です。 両館のコラボは成功したと言えます。 *美術館、 https://www.nmwa.go.jp/jp/exhibitions/2025dokomiru.html □鴨治晃次展,不必要なもので全体が混乱しないように ■作家:鴨治晃次 ■ワタリウム美術館,2025.4.8-6.22 ■銀座線で上野から乗り換え無しのため当館を選ぶ。 こちらは空いていました。 会場で出会った観客は5人もいない。 鴨治晃次(かもじこうじ)は初めて聞く画家です。 現在もポーランドを拠点に活動を続けているらしい。 彼は1959年にポーランドへ向かった。 驚くべき決心です。 戦争の傷跡がギラギラしていた頃ですから。 ポーランドといえばアンジェイ・ワイダとロマン・ポランスキーが先ずは浮かぶ。 同時代の「灰とダイヤモンド」と「水...

■藤田嗣治、7つの情熱

■監修:シルヴィー・ビュイッソン,作家:藤田嗣治,川島理一郎,板東敏雄,小柳正ほか ■SOMPO美術館,2025.4.12-6.22 ■「7つの情熱」という面白い切り口で藤田嗣治を展開しています。 彼の髪型ですが自身でカットしていたそうです。 1章「自己表現への情熱」でそれを初めて知る。 藤田と言えば御河童を先ずは思い浮かべてしまう。 次章「風景への情熱」「前衛への情熱」「東方と西方への情熱」は小ぶりの作品が多く数も少ない。 しかし彼の情熱は伝わってきます。 「アトリエの中のキュイビスムによる静物」(1914年)は気に入りました。 やはり藤田は「女性への情熱」が一番でしょう。 初めてのシェロン画廊も妻フェルナンド・バレエが仲介したらしい。 1920年代は「乳白色の肌」のリシュー・パドゥと、1930年に入りマドレーヌと共に中南米の旅へ、日本に帰り君代と結婚・・。 女性は?数えきれない。 そして「子どもへの情熱」へ。 作品数は一番多いが藤田は子供をどうみていたのか? 実はよく分かりません。 終章は「天国と天使への情熱」。 彼は渡仏した時からキリスト教には関心があったらしい。 今回の7情熱は非時系列の展開でいつもと違った見方だった。 でも観終わった後にはあの藤田嗣治がいました。 多くは個人蔵のため小ぶりの作品が多かった。 そのぶん初めて出会う作品が新鮮でした。 なんと第二部「情熱の来し方行く末」が続きます。 副題「藤田嗣治を囲む日本人美術家たち」のとおり9作家の作品が並ぶ。 東郷青児以外は他美術館や個人蔵です。 これは嬉しいオマケでした。 *美術館、 https://www.sompo-museum.org/exhibitions/2024/tsuguharu-foujita/

■異端の奇才、ビアズリー展

■作家:オーブリー・ビアズリー,ギュスターヴ・モロー,トゥールズ=ロートレック,チャールズ・リケッツ他 ■三菱一号館美術館,2025.2.15-5.11 ■ビアズリー200点以上をまとめた展示は過去に観たことが無い。 数枚ならあります。 彼の経歴も初めて知る。 結核を持ちながら作品に磨きをかけていく姿は何とも痛ましい。 しかも25歳で世を去るのは早過ぎます。 ビアズリーの作品は表と裏がある。 表は「サロメ」など挿絵の洗練された筆さばき、裏にある政治風刺画等々の荒々しいタッチの両面です。 彼の性格が垣間見える。 オスカー・ワイルドとの相性も良くなかったらしい。 ワイルドからみて彼は「日本的」だったのかもしれない。 なんと作品内にワイルドの顔を挿入するとは! ウィリアム・モリスから剽窃呼ばわりされても強気に出る。 才能に自信があったのでしょう。 母や姉そして支援者の力もみえる。 しかし「・・日中でも分厚いカーテンを閉めて蝋燭の光のもとで制作する」姿は異様です。 タイトルの「異端の奇才」に納得させられます。 そしてイギリス唯美主義にピタッと嵌まった。 「25歳、時代を駆け抜けた」に再び納得です。 ヴィクトリア・アンド・アルバート博物館の協力で家具や食器まで展示されている。 ビアズリーの生きた時空が感じられました。 *美術館、 https://mimt.jp/ex/beardsley/

■オディロン・ルドン、光の夢・影の輝き ■松山智一展

*下記の□2展を観る. □オディロン・ルドン,光の夢・影の輝き ■作家:オディロン・ルドン,ジャン=レオン・ジェローム,ロドルフ・ブレスダン ■汐留美術館,2025.4.12-6.22 ■ルドン展は5年に一度は東京で開催されている。 今年は間隔から良い年かもしれない。 それでも画家としては多い方ですね。 岐阜県美術館収蔵の作品を中心にした展です。 これも過去から多い。 でも気にならない。 またこの館は狭い。 小品の多いルドンには最適です。 作品の多くに文学からの影響が感じられる。 絵画的感動が少ない理由です、特に黒の時代は。 色の時代に入り文学や神話・宗教から離れてみることができるようになる。 眠りや瞑想が増えるのも接近し易い。 久しぶりのルドンを堪能しました。 「日比野克彦×ルドン@フォンフロワド修道院図書室」が上映されていた。 フォンフロワド修道院にはルドンの壁画が飾られている。 この図書室で日比野がゴーグルを掛け現実と仮想が結合した空間でペインティングを楽しんでいく。 彼にとっては時空を超えてルドンとコラボをしているようになるらしい。 これにAIを追加したらもっと「リアル」になるはず。 面白い時代になりましたね。 *美術館、 https://panasonic.co.jp/ew/museum/exhibition/25/250412/ □松山智一展 ■作家:松山智一,三宅一生 ■麻布台ヒルズギャラリー,2025.3.8-5.11 ■松山智一をまとめて観るのは初めてです。 カラフルで目が気になってはいたが。 絵画をじっくりみると近世日本画からの引用が多い。 とくに意匠を意識して取り込んでいる。 ギリシャ哲学、キリスト教からも目立つ。 ただし思想まで昇華しているようには思えない。 唯一「スーパーマーケットとギリシャ哲人(題名忘れた)」は社会批判がみえる。 全体は人物を含め半漫画のようです。 「色彩で叫ぶ!」とチラシに書いてあったが大衆受けしそう。 クリスチャン・ラッセンやヒロ・ヤマガタのような画家と同じ位置づけでしょう。 むしろ絵画より彫刻が面白い。 入口にあった「Mother Other」や腰掛ける女性「This is What It Feels Like」は一番です。 車輪のような抽象的な大きな彫刻もいいですね。 やっと松山智一を知ること...

■相国寺展、金閣・銀閣・鳳凰がみつめた美の歴史 ■高輪ゲートウェイシティ

*以下の□展示と□新建築を観る. □相国寺展 ■作家:夢窓疎石,春屋妙葩,文正筆,陸信忠筆,如拙,周文,雪舟,狩野探幽,維明周奎,伊藤若冲,池大雅,丸山応挙ほか ■東京芸術大学大学美術館,2025.3.29-5.25 ■相国寺は何回か訪れている。 でも寺に関する美術品をまとめて観るのは初めてかな? 当時の権力者や天皇、寺住職と芸術家の関係を結びつけられたのが嬉しい。 しかも寺を中心として室町から江戸時代までを時系列にした流れが分かり易い。 これで作品の立ち位置が深められた、会場内が分断されているのは欠点だが。 前半は中国画家、如拙(じょせつ)や周文、でも雪舟は少ない。 後半は探幽兄弟、若冲とその弟子維明周奎(いめいしゅうけい)、応挙、その他名品が並び目が忙しい。 そして日比野克彦学長の作品が終わりに紛れ込ませていたのが楽しい。 そう、今日は大学の入学式でいつもは静かな構内が賑やかだった。 上野公園の桜も満開でイベントが盛り上がっている。 西洋美術館の「西洋絵画、どこから見るか?ルネサンスから印象派まで」も観ようと寄ったが混んでいたので止める。 でもサンディエゴ美術館の所蔵品は見ておきたい。 西美の代わりに「まちびらき」した高輪ゲートウェイシティへ行くことにする。 *相国寺承天閣美術館開館40周年記念 *美術館、 https://museum.geidai.ac.jp/exhibit/2025/03/Shokoku-ji%20.html □高輪ゲートウェイシティ ■デベロパ:東日本旅客鉄道,設計:JR東日本建築設計,JR東日本コンサルタンツ,日本設計,日建設計JV,施工:大林組 ■竣工,2025.3.31(但し5棟中2棟) ■「まちびらき」と言っても5棟中2棟のみの竣工だった。 そのリンクピラ 南棟ではコーヒ店しか開業しいていない。 北棟も花屋が1店だけの状態だ。  広場に屋台が十数件でていたが、騙された気分だ。 南棟6階「未来につながる鉄道とまちづくり展」と地下2階「TAKANAWA GATEWAY CITY未来体験シアター」でも観て帰ろう。 取り合えずこれで当シティの過去と未来は分かった。 2026年の全棟竣工後に再度来ることにしよう。 *シティ、 https://www.takanawagateway-city.com/

■リビング・モダニティ、住まいの実験1920s-1970s

■建築家:ル・コルビュジエ,ルイス・カーン,ピエール・シャロー,ルートヴィヒ・ミース・ファン・デル・ローエ,広瀬鎌二,アルヴァ・アアルト,ジャン・プルーヴェ,フランク・ゲーリー,菊竹清訓,菊竹紀枝,エーロ・サーリネン,アレクサンダー・ジラード,ダン・カイリー,藤井厚二,ピエール・コーニッグ ■国立新美術館,2025.3.19-6.30 ■1970年代迄の住宅十数件の模型と資料(図面・写真・映像)が展示されている。 住まいの展示をみるのは楽しい。 住宅は心身に直結しているからです。 日本建築は体感的に分かる。 例えば藤井厚二の「聴竹居」は四季の温度湿度、日差しや風向など自然を意識しているので思わず頷きます。 比してインディアナ州に建てたエーロ・サーリネン「ミラー邸」の広々とした住宅は身体に届かない。 ピエール・シャロー「メゾン・ド・ヴェール」のガラスの壁はレーザ断面を見ても何とも言えない。 海外建築を取り入れた「土浦亀城邸」は階段ばかりで厄介でしょう。 加えて空中に浮かぶ清竹清訓「スカイハウス」も同じです。 気に入ったのはバラックのような建物です。 仮の宿のような住居は将来の不安が少ない。 精神が安定します。 例えばジャン・プルーヴェ「ナンシーの家」やフランク・ゲーリー邸などです。 自然への対応も容易で、特に災害が多い日本では尚更でしょう。 気に入ったのはル・コルビュジエ「ヴィラ・ル・ラク」かな。 これもシンプルな直方体で大きさもちょうど良い。 やはり自身の立ち位置と向き合ってしまいますね。 湖の畔は住居として不明ですが景色は最高です。 1970s年から既に50年が過ぎている。 全体に古さを感じさせます。 技術の向上はあったが、それよりも家族関係の変化が大きいはずです。 これが古さを速めているのかもしれない。 過去100年の前半50年という区切りは人間寿命からみて遠からず近からずの為か心身に分かり易い展示でした。 *美術館、 https://www.nact.jp/exhibition_special/2025/living-modernity/

■ヒルマ・アフ・クリント展 ■ヒルマ Hilma

*美術展と映画(配信)の□2題を観る. □ヒルマ・アフ・クリント展 ■東京国立近代美術館,2025.3.4-6.15 ■入場して目に入った「夏の風景」(1888年)には若きヒルマの才能がみえる。 以降の精神世界を描いた抽象作品には素直・純心・誠実が窺われる。 加えて彼女の抽象画は受け入れやすい。 柔らかい春の色彩と線に懐かしさがあるからです。 そして精神の安定が画家に感じられる。 この時代に抽象画を描けたのは家族の物理的な援助と周囲の良き人間関係の支援もあったはずです。 でも背景にある神智学がよく分からない。 仏教やヒンドゥー教にも近いらしい。 彼女の作品紹介が世に遅れた理由でしょう。 「花と木を見ることについて」(1922年)になると暈しも入る。 神智学から人智学へ移った? でも暈しを入れるのはむしろ逆でしょう。 そして何故神殿に拘るのか?、墓に拘ったミケランジェロのように。 やはり神秘思想はそのまま受け入れるしかない。 ヒルマの絵はそのまま直感で観るしかありません。 *美術館、 https://www.momat.go.jp/exhibitions/561 □ヒルマ Hilma ■監督:ラッセ・ハルストレム,出演:レオ・オリン,トラ・ハルストレム,キャサリン・チョーク他 ■配信,2025.3.30(スゥエーデン,2022年作) ■老いたヒルマが時代を回想する伝記映画です。 若き彼女と影響があった人々を描いている。 それは子供時代の船乗りの父、付き合った同性愛的な女性達たち、そしてルドルフ・シュタイナとの関係です。 しかしシュタイナとの意見の相違はよく分からなかった。 他画家の展示会風景も簡単に紹介されていましたね。 それはムンクとカンディンスキーです。 彼女が絵具に卵を混ぜている場面がよく出る。 色彩が柔らかい理由の一つはこれですか? 一生涯求めた神殿に似たグッケンハイム美術館での2018年回顧展を映し出して幕が下りるのが印象的です。 ところで、2023年に写真美術館で上映した「みえるもの、その先に ヒルマ・アフ・クリントの世界」(ハリナ・ディルシュカ監督)は見逃している。 未だ観ていません。 *filmarks、 https://filmarks.com/movies/109129