■ブルガリ・カレイドス、色彩・文化・技巧 ■時代のプリズム、日本で生まれた美術表現1989-2010

*下記□の2展を観る.
■国立新美術館,2025.9.17-12.8
□ブルガリ・カレイドス,色彩・文化・技巧
■作家:ララ・ファヴァレット,森万里子,中山晃子ほか,会場設計:SANAA,フォルマファンタズマ
■「日本におけるブルガリの展覧会としては10年ぶり、過去最大のスケール・・」とあるように、質・量ともに申し分のない内容だった。 展示会コンセプトは「色彩革命」とのこと。
金(ゴールド)、白金(プラチナ)、そしてダイヤモンドを組み合わせた純粋色のジュエリーに、心が高鳴る。 そこに色石が加わると芸術性が一気に際立つ。 先ずは赤か黄か青、次に緑か紫か橙。 色彩が重なり合うことで暖色と寒色の対比が生まれ、より複雑な象徴性が立ち上がってくる。 目が騒ぎ、脳味噌がピクピクと刺激されるような感覚に包まれる。
デザインはシンプルながら、蛇(セルペンティ)のモチーフも登場する。 作品の多くはブルガリ・ヘリテージ・コレクション所蔵だがサウジアラビア王室や女優エリザベス・テーラーの名前も見受けられ、華やかな雰囲気が垣間見える。    
「単色系からサファイア、ルビー、エメラルドを取り入れ、その後アメシスト、シトリン、ターコイズなどに広げていくアプローチはブルガリ・スタイルの特徴となり、色石の魔術師としての名声を確かなものにした」という解説にも納得。 この目でブルガリの色彩史を存分に堪能することができた。
□時代のプリズム,日本で生まれた美術表現1989-2010
■作家:森村泰昌,草間彌生,椿昇,村上隆,宮島達男,奈良美智,山城知佳子ほか
■登場する作家は50人と多いが、20年の歴史を扱うには少なく感じられる。 展示は「プロローグ」と「イントロダクション」で始まり、「新たな批評性」、「過去という亡霊」「自己と他者と」「コミュニティ持つ未来」と章が続いていく。
既知の作家や作品が多かったので会場を足早に廻ることにした。 今回は見逃していた映像作品を中心に鑑賞する。
「若き侍の肖像」(小泉明朗、2008年)、「pH」(ダムタイプ、1992年)、「OR、ダイジェスト版」(ダムタイプ、1998年)などを観る。 「仮面劇のためのプロジェクト<ヒロシマ>」(サイモン・スターリング)は混雑していたので断念し、「S/N」(ダムタイプ)、「ラブリー・アンドレア」(ヒト・シュタイル)は時間の都合で観るのを諦めた。
長時間映像が入ると展示会の流れが分断されてしまう。 ダムタイプのような長編作品は、「拘束のドローイング9」(マシュー・バーニー)のように別枠でまとめてもらえるとありがたい。
章構成は意味深で難解だった。 加えて絵画・写真・彫刻・映像が雑念と並び、会場全体に統一感がみえなかった。 まさに世紀末の混乱を象徴するような展示空間だ。 背景には、ソビエト崩壊に伴うヒト・モノ・カネの移動拡大が考えられるだろう。 二展で一日を使ってしまったが充実感があった。
*追記・・朝日新聞2025年10月7日夕刊に展示紹介記事が載っていた. 「過去という亡霊」「自己と他者」「コミュニティ持つ未来」の3章を,代表作品を掲げて分かり易く解説していた.章の具体的背景に近づけた気がする.