■オークション、盗まれたエゴン・シーレ
■監督:パスカル・ボニゼール,出演:アレックス・リュッツ,レア・ドリュッケール,ノラ・アムザウィ他 ■配信(フランス,2023年作) ■フランス地方都市の労働者宅からナチスに略奪され行方不明となっていたエゴン・シーレ作「ひまわり」が見つかり美術界に衝撃が走る。 本作は競売人(オークショニア)アンドレ・マッソンを主人公にしたオークション業界を描こうとする話である。 しかし、美術系からやや距離がある。 絵画を所持していた労働者や主人公、その助手、彼らの家族関係に多くの時間が割かれているためだ。 略奪された絵画の処理、競売人たちの駆け引きは明確には描かれない。 裏取引の存在を助手から知らされる主人公の経験不足も頼りなく映る。 この映画はフランスの階級社会を描いているように感じられる。 生まれ故郷がどこか?という問が繰り返される点や、家族関係の描写が多いのもその傾向を裏付けている。 終幕に絵を見つけた労働者に拍手が送られる場面があるが、美術界が抱える階層意識への後ろめたさを払拭する意図があるのかもしれない。 フランス人なら作品の背後にある地理や歴史を意識しながら鑑賞するだろう。 しかしフランスから遠く離れた立場の者にとっては、すべてがオブラートに包まれており、深層に辿り着くことは難しい。 表面的な描写を眺めるしかない。 *映画com、 https://eiga.com/movie/102804/