■深瀬昌久、1961−1991レトロスペクティブ ■土門拳の古寺巡礼

■東京都写真美術館,2023.3.3-6.4
■「深瀬昌久」の会場は二十世紀私的佳境風景が広がる。 彼の作品は私小説ならぬ<私写真>と言われている。 愛憎と家族が塗り込められた白黒写真を見ていると、なんとも言えない時代の匂いが蘇る。 誰もいない芝浦屠畜場、湿った松原団地、初めて降り立ったケネディ空港、1974年の家族写真、野良猫サスケ、・・。 ・・忘れていた自身の風景と比較する。 ヨーロッパ旅行での作者の足指や顔半分が写っている作品には笑ってしまった。 当時の旅行の裏側が垣間見える。 彼は行きつけバーの階段から転落し以後シャッターを切ることがなかったと聞いている。 沈みつつある「ブクブク」は見事な終章だ。
久しぶりの「土門拳」に期待したが、そうでもなかった。 土門を知った頃はいつもイナバウアーになっていたのだが。 会場に入って即戸惑ってしまった。 通路が狭い、写真間の距離が近い、そして作品順序が乱れている。 「室生寺」からやっと落ち着いて観ることができた。 納得できる作品は十数枚あったが、詰め込み過ぎにみえる。 無理に急がされたような観後感が残った。