■合田佐和子展、帰る途もつもりもない

■三鷹市美術ギャラリー,2023.1.28-3.26
■1940年生まれの合田佐和子は<焼け跡から>出発するしかない。 作品はまるでガラクタだ。 硝子、針金、機械部品、毛糸、鉄・・。 次第にタマゴやヘビ、人魚に近づいていく。 白石かづこ・瀧口修造との出会いがあって、時代と共に走り出したようにみえる。 転機は油絵だろう。 これで映画と演劇を取り込んでいく。
劇団状況劇場「鐵假面」「ベンガルの虎」「おちょこの傘持つメリー・ポピンズ」「女シラノ」そして「さすらいのジェニー」・・。 ポスターや原画が並ぶ。 次に演劇実験室天井桟敷「中国の不思議な役人」「奴婢訓」「青ひげ公の城」「上海異人娼館」そして「さらば箱舟」・・。 壮観である。
この二つの劇団は水と油だ。 しかし彼女の油絵はどちらの劇団にもヌルッと相性が良い。 横尾忠則のポスターを思い出してしまった。 彼のポスターも悪くはないが・・、彼女の作品は唐十郎と寺山修司の身体にベットリと絡み付いていく。
そして写真への接近とエジプトへの移住。 逞しい行動力である。 彼女は自身を叱咤激励するため、朝は沢庵を噛りコーヒーを飲みルー・リードを聴きながら仕事に向かった、と娘が回想している。
エジプト帰還後はシュルレアリスムを彷彿させるような作品が並ぶ。 UFO、通信、オートマティズム・・、神が降りてきた!? レンズ効果で光り輝く虹色の絵画が並ぶ。 精神疾患で入院し、黄斑浮腫にも罹かる。 体力が衰えてからは手に色鉛筆・・。 まさに戦後日本を駆け抜けた作家と言ってよい。 帰る途も、つもりもない!