■バスキア  ■バスキアのすべて  ■バスキア、10代最後のとき

□バスキア
■監督:ジュリアン.シナベール,出演:ジェフリー.ライト,デヴィット.ボーイ,デニス.ホッパー,ゲイリー.オールドマン他
■(アメリカ,1996年作)
■バスキアを直にまとめて観た記憶がありません。 しかし写真でも一度みたら忘れられない。 線と色と文字が電子軌跡のように共振している。 その振動は現実世界の裏側まで貫く。 キャンバスに広がる散文的緊張がモロに伝わってきて身が引き締まりますね。
新作「バスキア、10代最後のとき」を観に行く前に古い映画を2本取り寄せました。 彼を知りたい。 これがその1本でなんと劇映画です。 デヴィット・ボーイ、デニス・ホッパーやゲイリー・オールドマンが脇役を固めているのに仰天! しかしバスキアは何をしたいのかよく分からない。 目が何も語っていないからです。 後半アンディ・ウォーホルが登場してから少し面白くなる。 でもウォーホルも何を考えているのかよく分からない。 生温い映画でした。 とういことで2本目の「バスキアのすべて」に期待しました。
*映画comサイト、https://eiga.com/movie/47910/
□バスキアのすべて
■監督:タムラ.デイビス,ジァン=ミシェル.バスキア,ジュリアン.シナベール,ディエゴ.コルテス他
■(アメリカ,2010年作)
□ドキュメンタリーでバスキア自身と彼を知る人たちのインタビューでまとめている。 彼の作品が多く映されていて嬉しいですね。 やっとバスキアがみえてきた。 彼は有名画家を目指し、それを達成した。 作品と時代がシンクロナイズした為でしょう。 
しかし保守的評論家からは最後まで煙たがられていたらしい。 絵画を壊す力をバスキアは持っている。 美術で食っている人たちには不安が過るのでしょう。 絵画の外へ行ってしまう不安です。 結局彼はヘロインに溺れ追い詰められていく。
*映画comサイト、https://eiga.com/movie/55761/
□バスキア、10代最後のとき
■監督:サラ.ドライバー,出演:ジァン=ミシェル.バスキア,ファブ.5.フレディ,ジム.ジャームッシュ他
■恵比寿ガーデンシネマ,2018.12.22-(アメリカ,2017年作)
■さっそく恵比寿へ観に行く。 ドキュメンタリーですが周囲にいた人々の話が多くバスキア自身が喋る場面は殆ど無い。 先ずはニューヨークの財政問題から入る。 社会問題との繋がりでバスキアを論じたいようです。 トレイン・アートに時間を割いたりヨーゼフ・ボイスが絡んだホームレス問題やゼロックス複写機の話は面白い。
バスキアの描く言葉はW・S・バロウズの影響が強いらしい。 J・ケージやD・バーンなど音楽からもです。 「マーガリンのように言葉を薄く塗る」ように短い文字列で素早く表現するがしかし、練られている。 禅問答のようなところもある。 彼はSNSの元祖ですね。
しかし出演者のアル・ディアス、ファブ・5・フレディ、グレン・オブライエン、マイケル・ホルマン、ケニー・シャーフ、ディエゴ・コルテスなど多くが先日観た「バスキアのすべて」と重なる。 新顔はジム・ジャームッシュくらいでしょうか? 社会問題も有耶無耶になってしまった。 「バスキアのすべて」の繰り返しが目立つ。 良かったのはドキュメンタリーが持つリズム感が生きていたことですか。
バスキアが兄弟のような親しみと人を引き付ける魅力とカリスマ性を持っていたのは確かです。 彼を早死にさせたのは美術界の保守性、人種差別、成功者の傲慢など幾つも掲げられるが時代と共に走り切った。 そしてウォーホルもK・ヘリングも美術館の絵だが「バスキアは美術館の絵ではない」と言われるのがバスキアへの誉め言葉です。
*映画comサイト、https://eiga.com/movie/89606/