■オットー・ネーベル展、知られざるスイスの画家

■Bunkamura・ザミュージアム,2017.10.7-12.17
■これほど中身の濃い描き方とは知らなかった。 会場は11章から成り立っているが、どの章も見応えがある。
彼は建築を志していたらしい。 シャガールやクレーの影響を受けながらも、家々の重なり合う風景やレンガを積み上げた1930年迄の初期作品には彼独自の緻密な感性が形や色に表れている。 それは職人的な気質かもしれない。
転機はゲーテを思い出させる30年代の素晴らしきイタリア旅行だろう。 そこで出会った色彩を音楽や文字へ丁寧に適用してより職人的な作品を作り上げていく。 章が進むほど日本の伝統工芸を見ているような重厚でしかも軽やかな気分を味わう。
途中の章「抽象/非対象」でカンディンスキーとの比較があった。 ネーベルの作品は細胞内を顕微鏡でみている感じだ。 核やリボソーム、ゴルジ体やミトコンドリアがうようよしている。 カンディンスキーの活き活きとした躍動感とは質が違う。 職人芸と芸術芸の強弱差が出ている。 どこまでも彼は建築を意識しているようにみえる。 観終わった充実感も重層的である。
ところでネーベルは舞台俳優やアナウンサーの経験もあるらしい。 舞台写真や映像は残念ながら展示されていなかった。
*館サイト、http://www.bunkamura.co.jp/museum/exhibition/17_nebel/