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■イヴ・サンローラン展、時を超えるスタイル

■国立新美術館,2023.9.20-12.11 ■「・・大事なのはラインだ」。 ディオールの言葉です。 「・・スタイルは永遠である」。 当展示会でのサンローランの言葉です。 ラインは何とか分かる。 でもスタイルとは何か? サンローランはディオールの後を継いだが、直ぐに時代と共に走り出す。 その特徴は「紳士服を女性向けに改良した」ことで始まる。 これで女性を解放できる!? 手っ取り早い。 次は「机上の旅」で異国を想像しデザインに取り込む。 そして美術や舞台芸術からの感動を服飾に適用する。 ・・。 時代を消化していくのがわかる。 ところで彼がディオールを引き継いだ直後の「トラベーズ・ライン」には美が感じられる。 気に入ったのはイヴニング・アンサンブルのカーディガン類。 ゴッホとボナールなど画家へのオマージュのジャケット。 これらはライン→シルエット→つまり形が素晴らしい。 彼のラインにはディオール(の美)が無意識として存在している。 彼の言う「スタイル」は大きな時間の流れの中でみえてきます。 時代を(作品に)消化する才能をスタイルと言っているように聞こえる。 彼のスタイル=美がすぐには見えない理由がここにある。 彼の作品を微分するとライン=ディオールが、積分するとスタイル=サンローランがみえてくる。 *美術館、 https://www.nact.jp/exhibition_special/2023/ysl/

■永遠の都ローマ展 ■荒木珠奈展、うえののそこから「はじまり、はじまり」

■東京都美術館,2023.7.22-12.10 ■「ローマ展」作品の多くがカピトリーノ美術館所蔵です。 私の記録では昔に一度ここを訪れている。 しかし記憶が無い。 地味だったということですか? でも中庭の模様は素晴らしい。 ローマの航空写真のなかではピカイチです。 「ミケランジェロによる広場構想」として今回も一章を割いている。 会場に入ると「カピトリーノの牝狼」(複製)が置いてある。 たしか教科書にも載っていたはず。 じっくり眺めました。 狼にしては表情や体形に鋭さが無い。 やはり子供を育てているからでしょう。 目玉は「カピトリーノのヴィーナス」です。 この作品も写真で何回かみている。 悪くはないが、じっくりみると・・、いやとても良い。 四章は絵画コレクションだが、知っている画家は少ない。 会場はやはり地味ですね。 硬さのあるローマ帝国史をおさらいしているようです。 彫刻が多いので余計に硬かった。 近頃はイタリアにはご無沙汰しています。 またイタリアに行きたいですね。 でも今日の展示会はそのきっかけにはなりません。 ということで「ローマ展」横で開催している「荒木珠奈展」もみることにしました。 初めて聞く作家です。 メキシコに留学したようです。 骸骨があるある・・、「メキシコ万歳」ですね。 しかし銅板版画が得意のようです。 会場入口の作品は学生らしさが抜けないが、途中に展示されていた版画はなかなかです。 紙・木・土を使った作品も多い。 その成果として、地下会場に上野の風景が広がっている。 とは言っても、真っ黒い大きなカボチャの骸骨ような彫刻が置いてあるだけですが。 その周囲に破片らしい彫刻も落ちています。 20世紀の上野には暗い顔がある。 戦争引揚者と闇市、東北の終着駅、アメ横やパチンコ村の繁華街・・。 作品はこれを表現しているがきわめて抽象的です。 「岩倉使節団」がカピトリーノを訪ねてから150年、上野は戦後80年です。 上野の闇はもはや抽象的にならざるをえない。 *美術館、 https://www.tobikan.jp/exhibition/2023_rome.html *美術館、 https://www.tobikan.jp/exhibition/2023_tamanaaraki.html

■宇川直宏展 Final Media Therapist @Dommune

■練馬区立美術館,2023.9.10-11.5 ■宇川直宏のプロファイルには「現”在”美術家」「映像作家」「グラフィックデザイナー」・・、幾つも並ぶ。 「全方位的アーティスト」です。 でも「DOMMUNE主宰」が一番分かり易い。 会場は前口上で始まり、1章(1925ー1950)から6章(2020-現在)は年代順で音声(ラジオ)・映像(テレビ)・インターネットのアンダーグラウンド系配信史を具体的装置と作品で展開。 7章から9章はマスメディア・ローカルTV局などでの実践活動報告。 10・11章はAIも駆使しての絵画創作活動になっている。 その方向は放送・出版・広告を越えようとしている。 メディア世界の広さと深さを感じさせます。 「DOMMUNE」をみてもそう思う。 知らない人々と出来事で一杯ですね。 先日「ジェーン・バーキン追悼」番組をちらっとみたが、私は「欲望」のバーキンしか知らない。 これでもか!とバーキンに迫っていく。 作品量は半端でない。 雑音まで一緒くたで迫ってきます。 面白いのだが取っつき難い。 変わったセラピストです。 *美術館、 https://www.neribun.or.jp/event/detail_m.cgi?id=202306031685756682

■アンドレ・レオン・タリー、美学の追求者

■監督:ケイト・ノヴァック,製作:アンドリュー・ロッシ,出演:アナ・ウィンター,マーク・ジェイコブス,イヴ・サンローラン他 ■アマゾン・配信(アメリカ,2017年作) ■アンドレ・レオン・タリーとは何者か? 30分ほど観ていても分からない。 はじめはデザイナーかと思ったが・・。 スタイリストとは何か? これが分からなかったからです。 彼はD・ブリーランドの助手として美術館で働きだす。 ブリーランドに祖母の面影をみたからです。 彼は米国南部で生まれ育った。 そこで祖母から親しみのある厳格で自制心を持つ育て方を受けた。 「日曜日の教会はファッションショーのようだった」。 彼は懐かしく回想している。 そしてWWD紙パリ支局に移る。 アンディー・ウォーホルの電話番もしている。 最後にヴォーグの編集に携わりパリ・ファッションショーで影響力を増していく。 彼の職業は雑誌記者と言ってよい。 でも彼の記事は読んだことが無い。 これも彼が何者かが分からなかった理由です。  H・クリントンが大統領選に敗れた時の彼のショックは大きかった。 今も続く黒人差別を生き抜いているからでしょう。 フロントロウにアナ・ウィンターを(写真等で)よく見ていたがその横にアンドレがいたとは驚きです。 彼にとってスタイリストとは自分らしく生きると同義語だったはずです。 *映画com、 https://eiga.com/movie/98650/