■小早川秋聲、旅する画家の鎮魂歌

■東京ステーションギャラリー,2021.10.9-11.28
■小早川秋聲が外遊を煩雑にしていたのを知った。 グランドツアーの類にみえる。 1920年代の旅行は大変だったと思う。 遭難しかけたことも書いてある。 旅中に結婚までしている(?)。
1章「京都修行時代」から始まり2章「異文化との出会い」までは脳味噌が起きない。 旅行地図や葉書をみるのは楽しいが・・。 しかし3階から2階に降りた途端に作品が一変した。
「未来」(1926年)からは脳神経が活動しだした。 「玩具」(大正期)は目が喜ぶ。 ・・「長崎へ航く」「五月晴れ」(1931年)などスカッとした作品が次々と現れ見応えがある。 空気が澄み切っている。
それは3章「従軍画家」に入っても同じだ。 戦争画と言っても静寂が覆い血肉が昇華している。 彼は日中戦争を16世紀の戦国時代の延長として考えているようだ。 刀剣の手入れや茶の湯の人物はまさに中世日本の甦りである。 そして成吉思汗の馬と日本軍馬は同じにみえたはずだ。 時代差を凝縮し表現する、一つの歴史の見方かもしれない。
4章「静寂の日々」では旅の回想に気が休まったと思うが・・、なんとも言えない。 「國の盾」は戦後に何回も改作したらしい。 戦争の傷痕は大きい。