■カール・ラーション、スウェーデンの暮らしを芸術に変えた画家

■損保ジャパン日本興亜美術館,2018.9.22-12.24
■カールの作品はどれも薄い感じがする。 水彩画というわけではないが家族関係の濃密さは見えない。 日常生活がどういうものか伝わってこない。 例えば夕食のテーブルはまるでレストランのようだ。 室内も衣装も一昔前のデパートの広告である。 実際イケヤの居間もあった。 「産業革命による住職分離は私的な領域としての家庭を生み出した・・」。 そしてジョン・ラスキンの言う「美・秩序・安らぎを与える家庭」の流れを無条件に踏襲し形にしている。
カールにとって挿絵の仕事はこの流れから逃げる無意識の手段だったのかもしれない。 挿絵には狭い目的と広い世界がある。 その後、家族の肖像を版画で描いたのは彼が挿絵で冷静になったからだろう。 「エッチングは私的主題を表すのに適している」。 線は文字のように確かな記録にもなる。
妻カーリン・ラーションの存在が大きい。 カールとカーリンの初期油彩画「水差しのある静物」と「マルムストローム先生のアトリエ」はどこか似ている。 若い二人は芸術で意気投合したはずだ。 カーリンの腕前は確かだ。 しかしカールはそれを嫌った。
そして彼女は民芸に向かう。 「産業革命は粗悪な工業製品を作り出した」。 これに対抗するための美術工芸運動に彼女は出会った? リッラ・ヒュットネースの邸宅は彼女の時代嗜好が詰まっている。 家は彼女の両親から譲り受けたらしい。 カールへの影響はどれも大きい。
彼の描く家庭は民芸になってしまった。 民芸は家族関係に深入りできないが生活の遊びによく似合う。 カールの絵の楽しさは民芸を昇華したような遊ぶ子供達にある。  
*日本・スウェーデン外交関係樹立150周年記念
*館サイト、https://www.sjnk-museum.org/program/5469.html