■ジャコメッティ展

■国立新美術館,2017.6.14-9.4
■会場に入ると「大きな像、女レオーニ」(1947年)が立ってる。 作品を見上げるので上手く対話ができない。 白い台に作品を乗せたのが余計です。 人物像は作者が作成していた時と同じ目線になるよう展示するのが良いでしょう。 たとえば佐藤忠良や船越桂の人物像の前ではなぜ作品と対話ができるのか? 多くが作成時の高さで展示しているからです。
美術館はこの楽しみを敢えて無視しているし、ジャコメッティは別の意味でこれを追求しない。 「私とモデルの間にある距離は絶えず増大する・・」。 「近づけば近づくほどものは遠ざかる・・」。 統合失調症感覚で満たされています。
しかも彼はフランス思想界に雁字搦めにされていた。 超現実主義や実存主義にです。 途中シュルレアリスムから離れたが実存主義者に評価されながら亡くなる。 「眼差しをどのように捉えるか?」を追求した為もある。 彼は鼻から目にかけて何度も描き直しています。 しかし下絵から彫刻に移すと目を見開いているだけになってしまう。 それは他者から逃れる目ではなく死から逃れる目です。 フランシス・ベーコンと同じ問題を抱えてしまった。 モデルを釘付けにする理由もセザンヌとは違いますね。
気に入った作品は「マーグ画廊のためのポスター」(1954年)。 爽やかで力強い筆さばきです。 それと「犬」(1951年)。 犬は死の眼差しを持たないが信頼の視線を向けてくれる。 目は描かれていないし痩せ細った野良犬ですがそれを感じさせてくれます。 (犬好きはいつもこれです)
*展示会サイト、http://www.tbs.co.jp/giacometti2017/
*2017.7.20追記。 犬の信頼の視線には極端な社交性を持つ「ウィリアムズ症候群」に関連のする二つの遺伝子を彼らが持っている為らしい。 犬の優しい眼差しをもつ科学的理由が分かってくるのは楽しいですね。 AFP通信記事サイト、http://www.afpbb.com/articles/-/3136396