投稿

10月, 2024の投稿を表示しています

■アレックス・ソス、部屋についての部屋 ■現在地のまなざし ■光と動きの100かいだてのいえ

■東京都写真美術館,2024.10.10-2025.1.19 *下記の□3展を観る. □アレックス・ソス,部屋についての部屋 ■「・・親しみを感じるのは室内の写真だ」。 ソスの言葉です。 親密さというより<静かな演劇>です。 乾いた劇的さが一瞬みえる。 加えて乾いたアメリカの空気を感じる。 部屋の家具や小物に親近感が無いためか乾いているように見えるのかもしれない。 初めての作家ですが気に入りました。 *美術館、 https://topmuseum.jp/contents/exhibition/index-4820.html □現在地のまなざし,日本の新進作家,vol.21 ■作家:大田黒衣美,かんのさゆり,千賀健史,金川晋吾,原田裕規 ■静物、風景、社会、生活、人生などに5人の作品をざっくり分類できる。 でも分類不可能な作者の味がその奥に見えてきます。 人物か入るか否かで味も濃厚と薄味に分かれる。 前者では「明るくていい部屋」後者は「New Standard Landscape」が印象に残りました。 後者は薄味だが塩味が強い。 先日、保管してある写真の整理をしました。 近頃はクラウドに残すのでモノとしての写真は激減したが古い写真はすべて物理アルバムで保管してある。 一枚一枚をジッと見つめてしまい取捨選択に時間がかかった。 と言うことで「写真が山になるまで」は感慨深く見ました。 *美術館、 https://topmuseum.jp/contents/exhibition/index-4822.html □光と動きの100かいだてのいえ,19世紀の映像装置とメディアアートをつなぐ ■作家:岩井俊雄,エミール・レイノー,エドワード・マイブリッジ,エティエンヌ=ジュール・マレー,橋本典久ほか ■子ども連れの家族で凄い混雑です。 作品よりも子供の遊ぶところを見てきたと言ってよい。 *美術館、 https://topmuseum.jp/contents/exhibition/index-4818.html

■ルイーズ・ブルジョワ展

■森美術館,2024.9.25-25.1.19 ■六本木ヒルズの巨大な蜘蛛の彫刻を見るたびに作者はどんな人なのだろうか?と想像していました。 その思いとはかけ離れていましたね。 なんと!トラウマの塊りを持つ人だった。 展示会の帰りに再び蜘蛛を見上げながら、なるほど、そういうことだったのか・・。 場内はある種の緊張感が漂っている。 不気味な静寂です。 神妙に作品と対峙してしまった。 「魔法・謎・ドラマは決して失わない」。 ルイーズの言葉が作品に内包されている。 彼女の経歴映像からトラウマが何であったのかが朧気ながら見えてきました。 それは世界共通ともいえる家族に集約されていく。 母との蜜月、父の特異な性格、繁盛したタペストリ修復業の家庭、そして家庭教師と父の関係、姉妹のこと、従弟の突然の侵入、結婚してからは夫や子供の存在、これらの関係を全ての作品に塗り込めていく。 「私を見捨てないで!」。 「地獄から帰ってきたところ、言っとくけど、素晴らしかったわ」。 素晴らしかったかどうか?は分かりません。 でも母の子供として子供の母として充実した人生だったことに最期は納得したはずです。 「蜘蛛の巣」はルイーズの傑作だと再確認しました。 それは母親の象徴でもあったのですね。 *美術館、 https://www.mori.art.museum/jp/exhibitions/bourgeois/index.html

■松谷武判 ■抽象の小径 ■ナカバヤシアリサ

■東京オペラシティアートギャラリー,2024.10.3-12.17 *以下の□3展を観る. □松谷武判 ■「具体」と言えば吉原治良の黒地白丸の「円」が先ずは脳裏に浮かびます。 その具体美術は20世紀後半には立体から平面に移行している。 その後は平面に合うドロッとした液体こそが具体元になったのでは?  松谷武判の作成過程を撮った映像が流されていた。 はたして、行きつくところは単純・率直・素朴な液体そのものでしたね。 ドロッ、ズズッ、デロッ、ボタッ、・・具体の元に至った。 それは正解だった、と映像に写っていた松谷の顔がそう言っていました。 *美術館、 https://www.operacity.jp/ag/exh279/ □抽象の小径 ■作家:加納光於,堂本尚郎,山田正亮ほか ■ギャラリー4階まで松谷武判が占めたので寺田コレクションは少ない。 白髪一雄に目が留まりました。 白髪も具体でしょう。 *美術館、 https://www.operacity.jp/ag/exh/detail.php?id=305 □ナカバヤシアリサ ■速度のある描き方です。 そして風景が激しく揺れ動く。 風景の中から得体の知れない何かが出現する瞬間かもしれない。 それは風景の元かもしれない。 先の具体元に合わせて風景元とでも言いますか。  *美術館、 https://www.operacity.jp/ag/exh/detail.php?id=306

■カナレットとヴェネツィアの輝き

■SOMPO美術館,2024.10.12-12.28 ■カナレットが人名とは知らなかった。 当初はカナル・グランデ(大運河)に関することかな?と思っていました。 舞台美術家の父カナルと区別する為に「小さなカナル」つまりカナレットと呼ばれたらしい。 カナレットはヴェドゥータ(景観画)を描き続けた。 今なら名所絵ハガキに該当するのでしょう。 ヴェネツィアは行ったことがあります。 カナレットの絵を観ていると旅行のことが甦る。 今でも景観画の役割は立派に果たしていますね。 旅行者の思い出に残る風景を描いているからです。 でもカプリッチョ(綺想画)のように空想まで取り入れない。 実際の風景の構図を整える程度です。 そこに舟や人々を華麗に配置する。 版画も1章を割いて展示されていたが素晴らしい。 建物の線はビシッと決まり、人物は活き活き描いている。 カメラ・オブスキュラという機器も使っていたらしい。 彼はグランド・ツアー客に作品を売って大儲けしたようです。 その関係で後半はイギリスへ渡り景観画を描いた。 その作品も展示してあるがヴェネツィアのような親しみさは無い。 たぶん気候なども関係したはずです。 後半の章では同時代の画家たちの作品が展示されている。 でもカナレットには敵わない。 その一人ウィリアム・ジェイムズの絵は「硬質で味気ない」と言われたらしい。 まったくその通り。 比較するとカナレットの豊かさを再認識します。 終章にあった印象派画家が描いたヴェネツィアはまったくの別世界です。 比較できない。 今回の展示を観てヴェネツィアへまた行きたくなってしまった。 *美術館、 https://www.sompo-museum.org/exhibitions/2023/canaletto/