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■ルーブル美術館の夜、ダ・ヴィンチ没後500年展

■監督:ピエール=ユベール・マルタン ■Bunkamura・ルシネマ,2021.1.2-(フランス,2020作) ■準備期間10年、最多動員、予約困難、・・空前絶後。 2019年にルーブル美術館で開催された「没後500年記念レオナルド・ダ・ヴィンチ展」のチラシに掲載されているセリフです。 その回顧展がいま上映されている。 早速観てきました。 この記録破りな様子が撮られていると思ったら大違い。 観客のいない真夜中に、キューレータが展示されている主要作品を学術的内容で一点づつ解説していく流れでした。 美術展の雰囲気はゼロですね。 「聖トマスの懐疑」から始まるのが新鮮でしたが。 「生命感を出すために輪郭をぼかす」「執拗に修正してから描く」「未完成の完成!」・・。 個々の細部は面白いのですが、しかし眠くなりますね。 「生命の律動」「自然の謎」など言い古された言葉で素直に結論しているだけが原因のようです。 科学を意識しているがレオナルドと結びついていかないことが大きい。 キューレータは「レオナルドの開かれた人柄、広い心を展示会で知らせたかった」と言っている。 この映画ではスタッフの苦労話や観客で混雑している昼間のルーブルが見たかった。 *映画com、 https://eiga.com/movie/93635/

■ヘルムート・ニュートンと12人の女たち

■監督:ゲロ・フォン・ベーム,出演:シャーロット・ランプリング,イザベラ・ロッセリーニ他 ■UPLINK吉祥寺,2021.12.25-(ドイツ,2020年作) ■タイトルの12名が載っていたがアナ・ウィンターとスーザン・ソンタグしか知らなかった。 顔を見たら数名増えたが女優やモデルが多い。 彼の妻ジューン・ニュートンも入っている。 前半は彼の作品解説が続く。 当時の時代背景や人間関係、制作の裏話などが面白い。 もちろん写真はコクがあって目が離せない。 流れが単調になり飽きてきた頃に彼の出自の話に移る。 ここでニュートンの謎が溶けた。 それは彼がワイマール共和国に生まれ育ったことにある。 ナチズムが成長していく時代の混乱をモロに受けている。 彼の作品は「レニ・リーフェンシュタールの真似だ」と言われていたがその通り、隠すことはない。 違うのは被写体がリーフェンシュタールから政治精神を抜き取った身体にみえることだ。 そこに現代の差別や女性蔑視とは違う何かが感じられる。  それは豊穣だが無機質の輝きを持っている。 共和国でのユダヤ人の生き方が後々にも表れてしまったのだろう。 彼がピエロのように陽気になるのもそれだ。 後期作品をブッラサイと比較していたがニュートンはここでも都市精神を抜き取ってしまった。 その後にマネキン人形へ進んだのも頷ける。 ところで12人の多くは婆姿で登場するが当時の写真との比較がまた楽しい。 *映画com、 https://eiga.com/movie/93836/

■クリスト、ウォーキング・オン・ウォーター

■制作:イザベラ・ツェンコワ他,監督:アンドレイ・M・パウノフ,出演:クリスト,ヴラディミア・ヤヴァチェフ他 ■ユーロスペース,2020.12.19-2021.1.15(アメリカ・イタリア,2018年作) ■2016年イタリア、イゼオ湖でのクリストの創作過程を追ったドキュメンタリー映画です。 1970年にジャンヌ=クロードと共に発想し50年を経て日の目を見た作品らしい。 クリストは当時80歳を越えているが、行政との弛まない折衝・会議、市民への説明・講演、制作途中や完成後のアクシデント対応で休まる場面が一度もない。 頑固一徹な彼の性格が素晴らしいパワーと情熱を生み出している。 それ以上にスタッフは大変です。 湖上に22万個の立方体フロートを並べ5千トンの鎖で繋げて浮かぶ桟橋を作る・・。 フロート材は白ですがその上に黄色い布を被せる。 彼の作品は布で包まなければいけない。 しかも今回のように<建築>から作る作品は珍しい。 空から見ると布の皺皺が見えて壮観です。 完成後に市民を招待しますが5万人/日も訪れて大混乱に陥る。 入場制限せざるを得ない。 大きな事故もなく終わりましたが、その数か月後に砂漠の中で次の作品を検討している彼の姿には驚嘆します。 当作品「浮かぶ桟橋」は東京湾に作成する案もあったが許可が下りなかったようです。 映画では語られなかったが湖の生態系にも影響があるでしょう。 環境に敏感なオラファー・エリアソンとは違います。 この意味でクリストは20世紀、エリアソンは21世紀型の作家と言えるかもしれない。 *映画com、 https://eiga.com/movie/94251/