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■藤田嗣治、7つの情熱

■監修:シルヴィー・ビュイッソン,作家:藤田嗣治,川島理一郎,板東敏雄,小柳正ほか ■SOMPO美術館,2025.4.12-6.22 ■「7つの情熱」という面白い切り口で藤田嗣治を展開しています。 彼の髪型ですが自身でカットしていたそうです。 1章「自己表現への情熱」でそれを初めて知る。 藤田と言えば御河童を先ずは思い浮かべてしまう。 次章「風景への情熱」「前衛への情熱」「東方と西方への情熱」は小ぶりの作品が多く数も少ない。 しかし彼の情熱は伝わってきます。 「アトリエの中のキュイビスムによる静物」(1914年)は気に入りました。 やはり藤田は「女性への情熱」が一番でしょう。 初めてのシェロン画廊も妻フェルナンド・バレエが仲介したらしい。 1920年代は「乳白色の肌」のリシュー・パドゥと、1930年に入りマドレーヌと共に中南米の旅へ、日本に帰り君代と結婚・・。 女性は?数えきれない。 そして「子どもへの情熱」へ。 作品数は一番多いが藤田は子供をどうみていたのか? 実はよく分かりません。 終章は「天国と天使への情熱」。 彼は渡仏した時からキリスト教には関心があったらしい。 今回の7情熱は非時系列の展開でいつもと違った見方だった。 でも観終わった後にはあの藤田嗣治がいました。 多くは個人蔵のため小ぶりの作品が多かった。 そのぶん初めて出会う作品が新鮮でした。 なんと第二部「情熱の来し方行く末」が続きます。 副題「藤田嗣治を囲む日本人美術家たち」のとおり9作家の作品が並ぶ。 東郷青児以外は他美術館や個人蔵です。 これは嬉しいオマケでした。 *美術館、 https://www.sompo-museum.org/exhibitions/2024/tsuguharu-foujita/

■異端の奇才、ビアズリー展

■作家:オーブリー・ビアズリー,ギュスターヴ・モロー,トゥールズ=ロートレック,チャールズ・リケッツ他 ■三菱一号館美術館,2025.2.15-5.11 ■ビアズリー200点以上をまとめた展示は過去に観たことが無い。 数枚ならあります。 彼の経歴も初めて知る。 結核を持ちながら作品に磨きをかけていく姿は何とも痛ましい。 しかも25歳で世を去るのは早過ぎます。 ビアズリーの作品は表と裏がある。 表は「サロメ」など挿絵の洗練された筆さばき、裏にある政治風刺画等々の荒々しいタッチの両面です。 彼の性格が垣間見える。 オスカー・ワイルドとの相性も良くなかったらしい。 ワイルドからみて彼は「日本的」だったのかもしれない。 なんと作品内にワイルドの顔を挿入するとは! ウィリアム・モリスから剽窃呼ばわりされても強気に出る。 才能に自信があったのでしょう。 母や姉そして支援者の力もみえる。 しかし「・・日中でも分厚いカーテンを閉めて蝋燭の光のもとで制作する」姿は異様です。 タイトルの「異端の奇才」に納得させられます。 そしてイギリス唯美主義にピタッと嵌まった。 「25歳、時代を駆け抜けた」に再び納得です。 ヴィクトリア・アンド・アルバート博物館の協力で家具や食器まで展示されている。 ビアズリーの生きた時空が感じられました。 *美術館、 https://mimt.jp/ex/beardsley/

■オディロン・ルドン、光の夢・影の輝き ■松山智一展

*下記の□2展を観る. □オディロン・ルドン,光の夢・影の輝き ■作家:オディロン・ルドン,ジャン=レオン・ジェローム,ロドルフ・ブレスダン ■汐留美術館,2025.4.12-6.22 ■ルドン展は5年に一度は東京で開催されている。 今年は間隔から良い年かもしれない。 それでも画家としては多い方ですね。 岐阜県美術館収蔵の作品を中心にした展です。 これも過去から多い。 でも気にならない。 またこの館は狭い。 小品の多いルドンには最適です。 作品の多くに文学からの影響が感じられる。 絵画的感動が少ない理由です、特に黒の時代は。 色の時代に入り文学や神話・宗教から離れてみることができるようになる。 眠りや瞑想が増えるのも接近し易い。 久しぶりのルドンを堪能しました。 「日比野克彦×ルドン@フォンフロワド修道院図書室」が上映されていた。 フォンフロワド修道院にはルドンの壁画が飾られている。 この図書室で日比野がゴーグルを掛け現実と仮想が結合した空間でペインティングを楽しんでいく。 彼にとっては時空を超えてルドンとコラボをしているようになるらしい。 これにAIを追加したらもっと「リアル」になるはず。 面白い時代になりましたね。 *美術館、 https://panasonic.co.jp/ew/museum/exhibition/25/250412/ □松山智一展 ■作家:松山智一,三宅一生 ■麻布台ヒルズギャラリー,2025.3.8-5.11 ■松山智一をまとめて観るのは初めてです。 カラフルで目が気になってはいたが。 絵画をじっくりみると近世日本画からの引用が多い。 とくに意匠を意識して取り込んでいる。 ギリシャ哲学、キリスト教からも目立つ。 ただし思想まで昇華しているようには思えない。 唯一「スーパーマーケットとギリシャ哲人(題名忘れた)」は社会批判がみえる。 全体は人物を含め半漫画のようです。 「色彩で叫ぶ!」とチラシに書いてあったが大衆受けしそう。 クリスチャン・ラッセンやヒロ・ヤマガタのような画家と同じ位置づけでしょう。 むしろ絵画より彫刻が面白い。 入口にあった「Mother Other」や腰掛ける女性「This is What It Feels Like」は一番です。 車輪のような抽象的な大きな彫刻もいいですね。 やっと松山智一を知ること...

■相国寺展、金閣・銀閣・鳳凰がみつめた美の歴史 ■高輪ゲートウェイシティ

*以下の□展示と□新建築を観る. □相国寺展 ■作家:夢窓疎石,春屋妙葩,文正筆,陸信忠筆,如拙,周文,雪舟,狩野探幽,維明周奎,伊藤若冲,池大雅,丸山応挙ほか ■東京芸術大学大学美術館,2025.3.29-5.25 ■相国寺は何回か訪れている。 でも寺に関する美術品をまとめて観るのは初めてかな? 当時の権力者や天皇、寺住職と芸術家の関係を結びつけられたのが嬉しい。 しかも寺を中心として室町から江戸時代までを時系列にした流れが分かり易い。 これで作品の立ち位置が深められた、会場内が分断されているのは欠点だが。 前半は中国画家、如拙(じょせつ)や周文、でも雪舟は少ない。 後半は探幽兄弟、若冲とその弟子維明周奎(いめいしゅうけい)、応挙、その他名品が並び目が忙しい。 そして日比野克彦学長の作品が終わりに紛れ込ませていたのが楽しい。 そう、今日は大学の入学式でいつもは静かな構内が賑やかだった。 上野公園の桜も満開でイベントが盛り上がっている。 西洋美術館の「西洋絵画、どこから見るか?ルネサンスから印象派まで」も観ようと寄ったが混んでいたので止める。 でもサンディエゴ美術館の所蔵品は見ておきたい。 西美の代わりに「まちびらき」した高輪ゲートウェイシティへ行くことにする。 *相国寺承天閣美術館開館40周年記念 *美術館、 https://museum.geidai.ac.jp/exhibit/2025/03/Shokoku-ji%20.html □高輪ゲートウェイシティ ■デベロパ:東日本旅客鉄道,設計:JR東日本建築設計,JR東日本コンサルタンツ,日本設計,日建設計JV,施工:大林組 ■竣工,2025.3.31(但し5棟中2棟) ■「まちびらき」と言っても5棟中2棟のみの竣工だった。 そのリンクピラ 南棟ではコーヒ店しか開業しいていない。 北棟も花屋が1店だけの状態だ。  広場に屋台が十数件でていたが、騙された気分だ。 南棟6階「未来につながる鉄道とまちづくり展」と地下2階「TAKANAWA GATEWAY CITY未来体験シアター」でも観て帰ろう。 取り合えずこれで当シティの過去と未来は分かった。 2026年の全棟竣工後に再度来ることにしよう。 *シティ、 https://www.takanawagateway-city.com/

■リビング・モダニティ、住まいの実験1920s-1970s

■建築家:ル・コルビュジエ,ルイス・カーン,ピエール・シャロー,ルートヴィヒ・ミース・ファン・デル・ローエ,広瀬鎌二,アルヴァ・アアルト,ジャン・プルーヴェ,フランク・ゲーリー,菊竹清訓,菊竹紀枝,エーロ・サーリネン,アレクサンダー・ジラード,ダン・カイリー,藤井厚二,ピエール・コーニッグ ■国立新美術館,2025.3.19-6.30 ■1970年代迄の住宅十数件の模型と資料(図面・写真・映像)が展示されている。 住まいの展示をみるのは楽しい。 住宅は心身に直結しているからです。 日本建築は体感的に分かる。 例えば藤井厚二の「聴竹居」は四季の温度湿度、日差しや風向など自然を意識しているので思わず頷きます。 比してインディアナ州に建てたエーロ・サーリネン「ミラー邸」の広々とした住宅は身体に届かない。 ピエール・シャロー「メゾン・ド・ヴェール」のガラスの壁はレーザ断面を見ても何とも言えない。 海外建築を取り入れた「土浦亀城邸」は階段ばかりで厄介でしょう。 加えて空中に浮かぶ清竹清訓「スカイハウス」も同じです。 気に入ったのはバラックのような建物です。 仮の宿のような住居は将来の不安が少ない。 精神が安定します。 例えばジャン・プルーヴェ「ナンシーの家」やフランク・ゲーリー邸などです。 自然への対応も容易で、特に災害が多い日本では尚更でしょう。 気に入ったのはル・コルビュジエ「ヴィラ・ル・ラク」かな。 これもシンプルな直方体で大きさもちょうど良い。 やはり自身の立ち位置と向き合ってしまいますね。 湖の畔は住居として不明ですが景色は最高です。 1970s年から既に50年が過ぎている。 全体に古さを感じさせます。 技術の向上はあったが、それよりも家族関係の変化が大きいはずです。 これが古さを速めているのかもしれない。 過去100年の前半50年という区切りは人間寿命からみて遠からず近からずの為か心身に分かり易い展示でした。 *美術館、 https://www.nact.jp/exhibition_special/2025/living-modernity/