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6月, 2024の投稿を表示しています

■梅津庸一、エキシビション メーカー

■作家:梅津庸一,金子光晴+中林忠良,猪熊弦一郎,瀧口修造ほか ■ワタリウム美術館,2024.5.12-8.4 ■作家梅津庸一の挨拶文の一部を掲載します。 「おびただしい数の展覧会が開催され続けている。 ・・しかし、その多くの営みは既存のインフラの上で平準化されたコンテンツとして消費され忘れ去られていく」。 近頃はそう思うことがよくあります。  「ワタリウム美術館にはいつも制度化される以前のアートの気配が漂っている。 それは「未然のアート」と言い換えることもできるだろう」。 他館との違いにいつも感じます。 「昨今の「キュレーション」の流行により展覧会づくりの方法や落とし所はあらかじめ規定・拘束されるようになった」。 すでにここまで来ていますか? 「アーティストキュレータとして振る舞うのではなく「エキシビションメーカ」の精神に立ち返りたい」。 エキシビションメーカとは? 会場には当美術館で開催した展示会履歴が掲載されていました。 20世紀の当館を私は知りません。 今回は所蔵作品とゲスト作品を会場にばらまき梅津庸一作品を間に挟む構成らしい。 知っている作家は約40名中10名くらいしかいない。 いつもですが知らない作家が多いので楽しい。 そして会場が狭いので作品と親密になれる。 作品の呼吸や囁きまで感じられる。 エキシビションとしては、どうしようもなく最適な美術館です。 今回の展示を見て、エキシビションメーカとはキュレータ=企画者・管理者とは違いプレイングマネジャに近いように感じられる。 具体的には新人・新物・新事を発見・発掘しながら自身がそこに入っていき新しい関係を形造る・・。 *美術館website、 http://watarium.co.jp/jp/exhibition/202405/

■ブランクーシ、本質を象る ■清水多嘉示

■アーティゾン美術館,2024.3.30-7.7 *以下の□2展を観る. □ブランクーシ,本質を象る ■作家:C・ブランクーシ,A・ロダン,F・ピカビア,A・モディリアーニ他 ■「日本で初めてのブランクーシ展」とある。 ブランクーシの名前は知っていました。 作品も時々観ていた(気がする)。 でもブランクーシを<集めて展示>するのは大変らしい。 作品の多くは黄金色です。 洗練された抽象化にこの色がよく似合う。 怪物ジュエリーですね。 「プライド」(1905年)「苦しみ」(1907年)などは作品名を見てからナルホドと思える。 そのタイトルが無ければそう見えない。 「眠れるミューズ」(1910年)は分かる。 より抽象へ進むと想像したタイトルと略一致します。 「雄鶏」(1924年)が気に入りました。 具体と抽象が見事同期している。 ブランクーシは20世紀初頭美術の流れに沿い、かつ現代を見据えていた。 今では多くのブランクーシ風を見慣れてしまっている。 そのため素人がみると、こんなもんだろう、という感想が先に立ってしまうのです。 *美術館website、 https://www.artizon.museum/exhibition/detail/572 □石橋財団コレクション選,清水多嘉示 ■作家:清水多嘉示,中村彜,A・マティス,P・セザンヌ他 ■清水多嘉示(しみずたかし)は初めて聞く彫刻家・画家です。 彼は「洋画家中村彜(なかむらつね)を尊敬し絵画を学んだが、プールデルの作品に衝撃を受け彫刻に目覚めた」とある。 同時代人からの影響を強く受ける人と見ました。 中村彜、A・プールデルはもとよりA・マティス、P・セザンヌからもです。 セザンヌの影響を受けた作品には脳ミソが喜びました。 「すわる女」(1923年)はセザンヌ的感動が押し寄せてくる。 滞欧期の集大成「憩いの読書」も観応えがある。 この展示はプランクーシの付録だが大満足です。 *美術館website、 https://www.artizon.museum/exhibition/detail/573

■豊洲市場

■設計:日建建設,施工:水産仲卸売場棟=清水建設ほか,水産卸売場棟=大成建設ほか,青果棟=鹿島建設ほか ■開業,2018.10- ■豊洲市場へ行くのは初めてである。 開業から既に6年が経っている。 建物は4棟からなり、「青果棟」「管理棟」「水産卸売場棟」「水産仲卸売場棟」の順で歩く。 どの棟にも見学通路がある。 これが頂けない。 周囲から完全に分離されている。 ガラス越しから観る切り取られた風景では市場の雰囲気が伝わってこない。 外へ出ても立ち入り禁止範囲が厳しい。 市場というより会社見学の雰囲気である。 レストラン街が3ケ所、物販店街は一ケ所ある。 これらは従業員や業者用だろう、もちろん見学者で占められていたが。 「水産仲卸売場棟」の屋上へ上る。 芝生が張ってあり草原にいる気分だ。 一か月前に見学した「 晴海フラッグ 」がよく見える。 帰りに「千客万来」へ寄る。 無機質な市場から一転して華やいだ飲食街になる。 食の駄菓子屋が並んでいる感じだ。 ちょっと詰め込み過ぎかな? 通路も狭い。 観光客向けテーマパークと言える。 埋立地の豊洲は新しくなったが人工的な錆びもみえる。 一見客からみて、市場も人々が行き交う場所に感じられない。 舞浜・有明から続くテーマパークが似合う地域だ。 *豊洲市場、 https://www.toyosu-market.or.jp/

■ホー・ツーニェン、エージェントのA

*開催中の□3展を観る. ■東京都現代美術館,2024.4.6-7.7 □ホー・ツーニェン,エージェントのA ■作家:ホー・ツーニェン,YCAM山口情報芸術センター ■映像展は事前準備が必要です。 ホーム頁で上映条件などを調べる。 ヴァーチャル作品もあったが予約制でしたね。 長時間作品はチケット付き自宅配信を考えても良いでしょう。 多くの美術館では展示し難いからです。 同じような作品名があり混乱したが全展示の7割以上は観ました。 ホー・ツーニェンはシンガポールを拠点に活動している。 虎が登場するのでシンガポールを拡大した戦後マラヤ連邦をイメージしたほうがよい。 作者はマラヤの歴史・文化・生活なども考えているからです。 「時間のT」は新作らしい。 西欧時間概念や現代物理学における時間をテーマにしている(ようにみえる)。 画家のキリコやダリの絵が何度も映る。 作者は西欧哲学に興味があるようです。 東南アジアの時間は少ない。 易経や水時計や暦ぐらいですか。 ちょっと寂しい。 しかも何故か小津安二郎の作品が多く登場する。「晩春」「秋日和」の遅い結婚や林檎のトポロジーが語られる。 「秋刀魚の味」の軍隊礼もある。 作者の拡張パワーに圧倒されるが観ていて混乱しました。 手前がアニメ、奥が実写の二重スクリーンは深みが出ますね。 「ヴォイス・オブ・ヴォイド」は驚きです。 西田幾多郎の弟子三木清や戸坂潤などを描き、彼らの「支那事変の世界的意義」「平和論の考察」など幾つかの論文・講演を解説している。 戦場になった東南アジアに興味があるのは分かります。 でも、この時期この場所で京都学派を論じる理由は何でしょうか? 作者の全方位的行動力には驚きます。 何が飛び出すか分からない。 ここが面白いところですが、表面をなぞるだけのようにも感じられます。 *美術館website、 https://www.mot-art-museum.jp/exhibitions/HoTzuNyen/ □I WAS MADE FOR LOVING YOU & 人生はちょっと遅れてくる ■作家:サエボーグ,津田道子 ■駆け足で観る。 津田道子は映像と鏡を使って遅延現象を利用している作品群を展示。 サエボーグはビニール製の大きなウンコやハエの置物を展示。 これら作品を使って芝居を上演するようだが今日は休演らし