■モダンアートの街・新宿
■作家:中村彜,佐伯祐三,織田一磨,松本俊介,滝口修三,清宮質文ほか
■SOMPO美術館,2026.1.10-2.15
■「池袋モンパルナス」は美術館や芝居で度々取り上げられるが、「新宿中村屋サロン」が話題に上ることは殆どない。 SOMPO美術館が50周年記念として新宿に目を向けたのはよいタイミングだと思う。
1章「中村彜と中村屋サロン」から始まる。 中村彜(なかむらつね)をじっくりみるのは今回が初めてである。 「カルピスの包み紙のある静物」(1923年)は特に気に入った。 印象派風を感じさせながら、素早い線が画面にリズムを与え、色彩とも調和している。 画家ベルナール・ビュフェを薄くしたような雰囲気もあり、眺めていても飽きない。 「頭蓋骨を持てる自画像」(1923年)を目にしたときは、エル・グレコを思い浮かべた。 描かれた人物は聖ペテロだろうか。 彜は1924年に亡くなっており、これら2作品は死の直前に描かれたものらしい。 どちらにも、死から逃れられない諦観が漂っている。
コラム1「文学と美術」では岸田劉生「画家の妻」(1915年)が展示されていた。 東京では滅多に見ることができない。 思いがけない贈り物だった。
2章は「佐伯祐三とパリ/新宿」。 佐伯はモーリス・ヴラマンクから「このアカデミックめ!」と一蹴されたらしい。 下落合を描いた2作品が展示されていたが、彼は新宿で生活していたのだろうか? 新宿をテーマにしながら、画家たちの生活地図を掲載していないのは片手落ちに思える。 当時の写真なども併せて展示されていれば、より画家たちに近づけたはずだ。
コラム2「描かれた新宿」では木村荘八の90年前の「新宿駅」(1935年)が目を引いた。 暗い画面だが静かな活気に満ちている。 かつてのニューヨークのグランド・セントラル駅を思い起こさせる。 数十年前の同駅はとても暗かった。 絵の前に立つと過去の記憶が次々と甦ってくる。
3章「松本俊介と綜合工房」、4章「阿部展也と滝口修三」。 ここで松本俊介や滝口修三が登場するのは意外であり展示の幅を感じさせる。 松本俊介の「N駅近く」(1940年)は西武新宿線中井駅付近を描いたものらしい。 隣は下落合駅で、池袋と新宿のほぼ中間に位置する。 今日の展示をみても、「池袋モンパルナス」と比べると新宿はやや影が薄い印象を受けた。 むしろ池袋の文化圏に含めて考えてもよさそうだ。
*SOMPO美術館開館50周年記念